コラム

トップ > コラム

コラム

2019年10月

10月 26 2019

■ 普通社債の途中売却代金(債券の利回り)

・ 割引債の考え方(割引現在価値)が理解できれば,債券の途中売却の際の基準となる価格も,合理的に考えることができます。もちろん,発行体の信用力の変化や人気など需給要因で実際の取引は成立しますが,ここでは,そうした要因は無視し,いくらであれば市中金利と比較して合理的かを考えてみます。

・ 例えば,市中金利が年1%の状況下で,返済能力に全く問題がない会社が,額面100万円,払込金額=額面100%,年利1%で,期間5年の円建普通社債を発行し,投資家Aさんが,これを買い付けて,債券の残存期間が残りちょうど2年のときに売りたいとした場合に,これを買いたいと思うBさんは,いくらで買えば合理的なのでしょうか?

・ 普通社債は,その発行(起債)と同時に,発行体が,利払と満期における返済額(満期償還金額)を確定的に決定しています(ここでは取り上げませんが,利払金額(利率)や,償還期日,あるいは,満期償還金額が「条件」に従って変動するタイプの「社債」は,「仕組債」と呼ばれ,リスクが従来型の投資商品とは異なりますので注意が必要です。)。

・ Aさんの立場からみると,Aさんは,3年前に額面100万円の100%に相当する100万円を支払い,1年目から3年目までの合計3回,額面の1%に相当する1万円を3回受け取っています。そうすると,Aさんとしては,100万円(払込金額)-3万円(受領した利金合計)の97万円以上で買手が現れなければ損という立場になります。厳密にいえば,その3年間の間に,市中金利は1%ですので,その分のお金の価値の目減分も加味してくれなければ,売却でわずかな損になるとも言えます。でも,Aさんには,残り2年の満期までの時間を前倒ししてでも,お金が要るという売却へニーズがあります。細かなことは言っていられず,額面で損がなければいい,というような立場でしょうか。

・ 他方で,有利な投資なら買ってもいいかなと考えるBさんの立場からみると,既発債を買うと,Bさんは,2年後に普通社債の発行体から確定金額で100万円を払って貰えると確約されています。また,購入する時期は,残りちょうど2年の期間ということですから,購入から1年後(債券発行から4年後)と,購入から2年後(債券発行から5年後)には,額面の1%に相当する利金1万円が2回払って貰えると確約されています。
  市中金利と債券の固定金利が1%で同じですので,残期間2年の債券を額面どおり100万円で購入しても,Bさんとしては「損」はないはずです。ですが,それであれば,市中金利で運用すればよく,Bさんにとって有利な投資とはいえません。

  そのため,例えば,Bさんは,98万円でAさんから買うことができれば,98万円の買付代金に対して,1年目の金利1万円,2年目の金利1万円と,償還金100万円の合計102万円を得られることになり,98万円に対して2年で4万円を獲得できますから,実質的には年2.04%の利子を得たのと同じです。

 4万円=償還金100万円+2年目利金1万円+1年目利金1万円-買付代金98万円

 2.04%=4万円(比べる量)/98万円(もとにする量)

・ このように,売りたい側と買いたい側との思惑が一致して満期まで存続期間のある債券の売買が行われます。債券市場で金利が高騰・下落したという場合,普通社債の固定金利が変動する訳ではなく,上記のように,売りたい側と買いたい側の需給によって,途中売却価格が決められると,そこから逆算して,利回りが算出されて,「金利」という形で報道されているのです。

・ そして,債券の将来分の金利収入と償還金額の合計額よりも高い値段で取引されると,債券の利回りはマイナスとなります。株式に比べ,国債などの債券は安全資産と考えられていますから,景気の先行きに不透明感が増しているような場合には,購入価格よりも高値で売り抜けられることを前提に,マイナスの利回りであっても,債券を買おうとする人はいるようです。


10月 21 2019

■ 金利のない債券?(割引債)

・ ここまでのコラムでは,元金に対して年利〇%の利息が付く,というような普通社債を念頭に解説してきました。では,金利が全く付かない債券があるとしたら,その値段をどうやって決めればよいのでしょうか?

・ 例えば,市中金利が年1%の状況下で,返済能力に全く問題がない会社が,5年後に100万円を返すと約束するとき,いくら貸せば,市中金利と同じ運用ができたことになるのでしょうか?

(100万円を複利年1%で〇年運用)
  1年後:101万0000円(100万円×(1+0.01)^1)
  2年後:102万0100円(100万円×(1+0.01)^2)
  3年後:103万0301円(100万円×(1+0.01)^3)
  4年後:104万0604円(100万円×(1+0.01)^4)
  5年後:105万1010円(100万円×(1+0.01)^5)

   これを逆に,

(〇年後に複利年1%で100万円になる金額)
  1年後:99万0099円(100万円/(1+0.01)^1)
  2年後:98万0296円(100万円/(1+0.01)^2)
  3年後:97万0590円(100万円/(1+0.01)^3)
  4年後:96万0980円(100万円/(1+0.01)^4)
  5年後:95万1466円(100万円/(1+0.01)^5)

  と考えれば,95万1466円は,年1%の複利運用で5年後に100万円になると考えられます。
  このように,答えは95万1466円です。

・ 5年後の払戻金額だけが決まっている債券であっても,市中金利と比較した「運用」を観念することで,現在の価値が算定されます。こうした利金がなく満期時に額面償還され,額面価格より低く発行価格が設定されている債券を割引債(わりびきさい)といいます。


10月 15 2019

■ 債券の金利と信用リスク

・ 中央銀行の政策金利に近い金利として,銀行間取引における金利があります。少し前の金融工学の解説書には,リスク・フリー・レートとしてLIBORという銀行間取引の金利が計算基準として用いられておりました。その発想というのは,倒産するとは考えない銀行同士で行う短期取引の金利だから,信用リスクは無視して構わない,だから,リスク・ゼロの取引であっても観念せざるを得ない金利(利率)なのだ,と。

・ しかし,一国の金融システムの一翼を担っているからといって,潰れないあるいは潰されないと考える(too-big-to-fail)のはおかしいと思います。株式会社となっている銀行は,営利目的企業に過ぎないのであり,取り付け騒ぎが起きないでいるのも相応しい企業努力があるからなのだと思います。

・ お金に対する信任も,他の人も価値があると思うと信じることが,皆に当てはまるからだとも考えられており,多くの人が,単なる紙片や金属片と捉えるようになれば,通貨制度は成り立ちません。

・ 話が脱線してしまいましたが,お金を貸す側は,普通,借り手がきちんと返してくれるのかを考えます。個人なら職業や収入を基準に,企業ならその経済的規模や成長性などを考えて,同じ分類の総体で,返してくれなくなる,つまり倒産・破産する率を考慮して,貸付の際の金利に含めるでしょう。
  このリスク・フリー・レートからの「上乗せ分の金利」が,借り手の信用力に応じた金利分なのです。債券については,逆に,借り手が金利を決めて起債しますから,金利が高い債券の方が,金利の低い債券よりも,発行体の信用力が劣るということを意味します。


10月 08 2019

■ 外国の債券はなぜ高金利なのか?

・ 素朴な疑問として,なぜ,日本では金利が年0.001%しか付かないのに,外国では年5%くらいの金利が付くのでしょうか? 決して,外国の企業が日本の企業より気前がよいからではありません。

・ 企業なり,国なりが,資金を調達する際に発行する借用証書が「債券」なのですから,貸してくれる人が現れる程度に,利息を約束しないとお金の「貸手」が現れません。その金利を決定する上で,基準の一つとなっているのが,その国のインフレ率です。

・ 日本では長らくデフレが続き,政府や日銀が2%の目標を掲げて金融政策を執っていますが,中央銀行の大きな役割がインフレ・ファイターと言われるように,外国とくに経済成長をしている国にとっては,年4%,年5%のインフレが進行するは自然なのです。

・ 年5%のインフレが起きている国の中は,今日100通貨単位で買えたものを1年後に全く同じものを買うのに105通貨単位を払わなければならないという状態です。つまり,毎年,1年前のお金の価値と比べて5%づつお金の価値が目減りします。お金の貸手が現れるように,この物価上昇によるお金の価値目減分を埋め合わせるために,金利を付ける必要がある,ということです。

・ 各国の中央銀行は,金融政策を行う手段として,公定歩合・政策金利の誘導を行っています。その国の政策金利をみることで,その国のインフレ率がおおよそ推し量れるのではないでしょうか。

・ そして,大雑把にいえば,世界中の国ごとに基本となる利率は違うのですが,世界中を駆け巡るお金の動きによる為替相場によって,円貨換算した場合の名目額は調整されるのです。


10月 08 2019

■ シリーズ・外国債券

・ みなさん,ご無沙汰しております。証券被害事件に取り組んでおりますと,わが国の超低金利政策のせいか,外国の株式,外国の債券などが,顧客の取引対象として,登場してきます。

・ 外国政府や外国の準政府機関などが発行する国債・公債,あるいは,外国の企業が発行する外貨建普通社債などについては,為替リスク,信用リスク,カントリーリスク,流動性リスクなどがあり,名前と簡単な説明くらいは説明資料に書かれていると思われます。

・ では,実際にどういうことかという点では,なかなかピンと来ない人も少なくないようです。事件処理を通じて理解したことを,今後,「シリーズ・外国債券」として書きます。


©2015 Makino Law Office. All rights reserved.