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3月 02 2021

■ 時間を知る、幅を知る

・ 株価はときに速くなったりする

株価は時々刻々と動いています。その動きは、取引が多く成立すれば速くなり、取引が閑散としていれば遅くなります。ネット取引をしている方なら、板画面で値段が動くスピードとして実感されているのではないかと思います。私自身は、普段、日経新聞を読んで、金融市場の大まかな動きは眺めていますが、常にみている訳ではありません。

ですが、何年か前にQUICKの画面を見学させてもらったので、ニュースで日経平均や為替の動きを見て、動きのスピード感を想像しています。

 

・ 投資期間はリスクを想像する上で重要

どれくらいの期間で、どれくらい値段が動くのかといった感覚は、投資行為をする上でとても大切なことだと思います。自分なりの取引をする基準を決めておき、経済情勢など環境の変化を吟味しつつ、基準の見直しを図る頻度を考えたりすることが、有意義だと思います。市場は常に動いていますが、常時見続けている訳にもいきませんから、時間と値動きの幅から、ときどきチェックするタイミングをもっておくことで、思惑が外れたときに対処する機会を(値が大きく乖離しない)確保できるようになる、と思えるからです。

 

・ 差金決済取引の危険性

先物取引やCFDと呼ばれる差金決済取引では、呼び値と取引単位との間に差違がありますから、値動きが、その差違の分だけ増幅して損益に反映されることになります。あらかじめ、相場が動いたときに、1日とか数日とかいった期間でのどれくらい値が動くのか、その幅を知っておき、それに対して損益がいくら発生するのか知っておかないと、痛い目に遭うことになりかねません。損失の拡大に気付くことができずに放置している間に損失がとても大きくなってしまったり、逆に、目先の値動きに振り回されて、わずかな益を確定させるために多大なコストをかけてしまうこともあり得ます。いずれにしても、相場は不確実なものですから、常に自分の想定を正確にしようと努め続けることが欠かせないといえます。

 

・ 冷静さを失わないために

逆に、予想外に大きく相場が動いてしまって、処分すると損を確定させることになってしまうシチュエーションにも、値動き幅と時間を知っておくと、どれくらい持ち続ければ回復するのか想像することが出来るようになります。もちろん、想像ですので、その通りにならないことだってあるでしょう。しかし、少なくとも価格変動サイクル(景気サイクル)から、将来どれくらいの期間塩漬けにするのか、ということを冷静に考えられるようになり、焦って底値近くで損を確定させてしまうことは避けられるのではないかと思います。


2月 17 2021

■ 無料広告という手口・ご注意。

1.相談の内容

最近,たて続けに,「無料求人広告に応じたが,料金を請求されて困っている」という相談を受けました。

 

2.勧誘・説明の問題点

契約書には無料期間中に契約更新を望まない場合には12日目までに解約を申し出ないと自動更新されるとの条項がありました。しかし,業者の電話による説明では,「初回,2週間無料。2週間以内に申し出ていただければ無料で費用はかかりません。」と言われていたこともあり,「12日目までに」という契約条項に気付かず,解約を申し出ようと思っていた14日目に至っていまいました。

 

この例の場合,厳密には2週間ではないのに,「2週間以内に解約を申し出れば無料」と説明する行為は,解約申出期間といった契約の重要な要素について,故意に誤解を誘発させるように仕向けているため,詐欺取消や錯誤取消ができると考えられます。

 

3.手口と注意点

客に交付する文書とは明らかに反する説明がなされていたので,広告業者側は,誤解させるようなセールストークをして,客の不注意に乗じて,書類上の文言を根拠に,後日,有料掲載期間に入ったといって,割高の広告料金を請求する手口のように思われます。

こうしたトラブルに遭遇しないためには,面倒でも,サインした書類を相手方へ渡す前に,契約書などの文書が,実際に受けた説明どおりの内容になっているのか,今一度確認されることをお勧めします。また,世間には「無料」をうたう商売もあるようですが,一歩引いて,「無料とうたいながら,なぜ商売として成り立っているのか」を考えてみることをお勧めします。


2月 10 2021

■ 資産とインフレ

・ 一般に、資産(金、不動産、株式など)は、インフレに強いと言われることがあります。経済成長と呼ばれているものは、適度なインフレを想定しており、インフレとは、お金の価値が下がる現象ですから、同じもの(資産)を買おうとするのに、より多くの価格がつく(貨幣の額面が多く必要となる)ということです。

・ これは、モノの価値を基準としてみると、よく分かります。金(元素記号:AU、ISO通貨コード:XAU)は、非常に長期間錆びたりしにくく、その表す価値の保存に適しています。同じ量の金を買うのに、いくらの値段がつくのかといった視点から、比較時点での貨幣1単位が表す価値がいくらなのかを比較できます。

・ この金と同じように、土地についても、欲しいという人がいる限り、値段がつき、同じ土地にいくらの値段がつくのかといった観点で、その時期の経済状況に応じて比較できます。土地そのものの価値は外部環境が変わらなければ同じ筈ですので、インフレに強いということになります。なお、建物では老朽化を考慮しないといけません。

・ では、株式についてはどうでしょうか。日持ちしそうな資産に検討を加えてきた流れで、お気づきになられた人もいるでしょうが、株式を発行している企業の永続性に関わります。30年、50年、100年と存続し続ける企業の株式なら、企業が正常に存続している限りにおいて、資産として価値を保存する効果があると一応いえます。日々上げ下げはあるでしょうし、何か問題があった際には下げることもあるでしょうが、企業が時代の変化に適応し良好に存続しているのであれば、若い頃に買った株を持ち続けて、年老いた頃には評価額が増えているといった感じです。

・ 問題は、その企業が、長期間、時代の変化にも適応しつつ存続し続けるか?ということですが、こればかりは誰にも分かりません。20年も経てば経済環境も変わるでしょうし、それこそ不祥事だって起きるかも分かりません。

・ 株式(現物)は、インフレに強いと言われることがあります。年限のある債券や投資信託も、国や企業が発行したり、運営したりするファンドの存続に関わっています。ですので、投資商品の中では、株式は比較的インフレに強いとはいえます。しかし、金や土地といった物質と比べれば、株式は、発行企業が時代に適応し存続しているといった条件付での話なのです。

・ 企業の存続可能性について、一般論としては、企業の財務状況やコンプライアンスの程度といえそうです。証券取引市場ごとに上場基準(1部が最も厳しく新興市場ほど緩いと言われている)が定められていますので、どの市場で取引されている株式なのかが一応の参考にはなるでしょう。


1月 20 2021

■ 投資取引にまつわる損害賠償について

・ 当事務所では、投資取引の顧客側代理人として事件処理に携わっています。

・ どのような場合に請求が認められるかは,証拠関係にもよりますが,その取引によって異なります。例えば,投資といっても,実は,投資を装った詐欺の場合,損害賠償が認められても,加害者から賠償を得るのは難しいことがあります。よくあるケースではパソコンの画面では,お金が増えていくような表示がされるものの,ただそのような表示がされているだけで,いざ払い戻そうとすると,お金として払い戻せないパターンです。

・ 商品先物取引は,かつて、私が弁護士となった頃には、典型的には、電話で儲け話を聞かされ、その気になり、ときには借金をしてまでお金をつぎ込まされ,最初の数回は利益を上げるが、その後は、追証請求を受け追加資金を出させられ、今度は追証を回避するためと言われて、売と買の両方のポジションをもつ両建てにさせられ,損失を挽回するためと言われて取引を繰り返すうちに、資金が尽きる、こういった感じの被害事例が横行しておりました。

今では,商品先物取引に関する規制が強化されたため,こうした典型例は少なくなった印象ですが,昔商品先物取引業者に勤めていた人たちが,FX取引やCFD取引といった顧客と相対取引(売る値段,買う値段を業者が決めてその差額を受け払いする取引)を行う会社に流れていきましたので、一部で、顧客から取引名目でお金を奪っていくような業者もいるようです。こうした業者には,証券会社に比べれば,損害賠償が認められ易いといった印象です。

・ 銀行や証券会社はどうでしょうか。為替デリバティブや仕組債といった難しい取引・商品が問題とされた事例があります。株式では頻繁に取引させることで証券マンが手数料を稼ぎ出すという事例もあります。

ただ,投資取引では,基本は自己責任なので,損害賠償請求が認められるには,なかなか難しい印象です。無断で取引されたというのでない限り,顧客の自己責任原則の例外として,顧客の投資判断を歪められたといえることが必要です。法律では,適合性原則に従うことや説明義務を尽くすこと,断定的判断を提供しないことといった義務づけがなされていますので,これらに違反したことが前提となります。要するに,聞いていた話と違うといった要素が必要です。

さらに,断定的判断の提供があると投資判断を歪められたと考えられ易いですが,仕組みやリスクについて課せられている説明義務・情報提供義務の問題を検討する上では,相場判断の間違いそれ自体は,投資取引にはつきものですから,仕組みやリスクについて誤解させたという要素も必要です。

・ 聞いていたことと違う,取引の結果について納得できないという場合,ご相談下さい。労を惜しまず、お付き合いしたいと思います。


1月 23 2020

■ 格付の意味を知ろう

1.ハイ・イールド債とは
・ みなさん,ハイ・イールド債と聞いて,どのようなイメージを持ちますか? ハイ=高い,イールド=利回り,ということから,利率が高いことと引換に,デフォルト(債務不履行,倒産)の可能性が比較的高い債券のことだと分かりましたか? 洗練されたような言葉の響きから誤解をしてはいけません。低俗な呼び方をすれば,「ジャンク債」とも言われます。英語のJunkとは,そのまま使える見込みがないほど故障・損耗し、本来の製品としての利用価値を失っている故障品という意味です。

・ では,債券投資の分野で「ジャンク債」とは,どのような債券なのでしょうか。
ある投資信託の説明書には,「一般に、ハイイールド債券とは、格付けがBB格付以下の社債(企業が発行する債券)を指します。投資適格債(BBB格相当以上の債券)と比較してデフォルトリスクが高くなる(信用力が低くなる)一方で、利回り水準が高いという特徴があります。」と書かれていました。

2.信用格付とは
・ 投資適格債(BBB格付相当以上の債券)ではないという記述から,非投資適格であるということは読み取れますが,そもそも「格付」という言葉の意味が分からないと,どういうことなのかよく分からないでしょう。
ここでいう「格付」とは,金融庁に信用格付業者の登録をしている格付会社が,債券を発行している企業や金融機関(発行体)の債務支払能力を評価して,信用力をランク付けしたもののことです。
信用格付業者ごとに若干の違いはありますが,格付記号によって,債務支払能力の大小が表示されています。

3.デフォルトの可能性はどれくらいなのか
・ デフォルトとは,債務不履行のことで,単に期日までに支払えない支払遅延から,破産・倒産といったものまで含みます。格付記号ごとに,どれくらいデフォルトの可能性があるのかが表示されているのですが,相対比較では,なかなかイメージがわかない方も多いと思います。そこで,実際の例を調べてみましょう。

・ 例えば,日本格付研究所(JCR)は,格付推移マトリックス,累積デフォルト率を公表しています。2019年3月20日付の「企業格付の格付カテゴリー別累積デフォルト率」では,次のような結果が示されていました。

JCR格付け

・ この累積デフォルト率の結果から,投資適格債(BBB)以上では,1年後のデフォルト率は1%を下回り,累積5年でも3%を下回っています。つまり,この部類に分類された発行企業100社のうち,1年以内に債務不履行を起こしたのは1社だけ,5年以内に債務不履行に至ったのは3社だけ,という割合を示しています。

・ 他方で,非投資適格であるBB格では,1年後のデフォルト率が3%を超え,累積5年では15%弱となっています。つまり,この部類に分類された発行企業100社のうち,1年以内に債務不履行を起こしたのは3社を超え,15社くらいが5年以内に債務不履行に至った,という割合を示しています。
さらに,B格では,1年後のデフォルト率が20%で,累積5年のデフォルト率は54%を超えています。つまり,この部類に分類された発行企業100社のうち,1年以内に20社が債務不履行を起こしており,54社が5年以内に債務不履行に至った,という割合を示しています。CCC格以下も同様にデフォルトとなった割合が示されています。

4.投資信託としても変動性は大きい
・ このように,非投資適格という格付の債券は,デフォルトし元金の償還が受けられない割合が高いため,単品で購入するには危険が高すぎます。
そこで,投資信託という形で分散した上で,デフォルト(債務不履行,倒産)せずに高利率のクーポンと元本償還が受けられた部分で,デフォルトしてクーポンや元本の返済が受けられなくなった債券の穴を埋め合わせることで,投資信託としての投資元本の毀損の危険性をいく分和らげるようにしてあるのです。先の英語の「ジャンク」の意味になぞらえれば,投資信託として構成しなければ,販売できないという意味では,「ジャンク」なのです。

・ このように,ハイ・イールド債は,財政基盤や,事業活動についての永続性に不安が残る企業が発行する社債=債券ですので,景気動向や,企業環境(輸出・輸入に関係する場合には,為替相場)が,デフォルトのし易さに比較的影響します。投資信託として構成した場合には,景気動向や企業環境などが,その基準価格の変動に比較的影響することになります。


12月 08 2019

■ 将来為替の動きを確率的にイメージする

・ 前回は,理論価格は,あくまで理論価格であって,「将来,現実の世界でそのようになる」というものではありませんが,将来の為替がどのようなスピードで円高となるのか,理論価格が示す結果をグラフ化してみました。

・ ところで,理論価格は,期待値とも呼ばれており,計算時点の金利を前提に最も可能性が高いところを結んだ線とも捉え直すことができます。また,どのくらいの変動が起きるかは,計算時点でのボラティリティーは既知ですので,その幅を示してやることによって,大雑把にはつかめます。どれくらいの範囲で,起こりやすいかを示してみます。
(図2)

FW為替イメージ図2

・ 債券発行当時のボラティリティを踏まえ,1標準偏差に相当する幅などを加えて図示してみると,上の図2のようになりました。為替相場が変動する上で,起き易い範囲,起き難い範囲が視覚化されます。

・ こうしたイメージは,事件に取り組んでいたときに,ふっと沸いてきたものですが,仕組債の価格評価を依頼した専門業者の方とお話した際にも,そのようなものだとご意見いただきましたし,後に出版された大手銀行が書いた専門書にも,(より専門的に確率のパーセンタイル値として表示されていましたが意味内容としては)同様の図が示されていました。誰も予知・予想できない事項は織り込むことは出来ませんが,既知の情報(為替水準,金利,ボラティリティー)から,将来の為替について,発生の可能性の大小を確率として示すことはできるのです。


12月 01 2019

■ 将来の為替の理論価格を計算してみる

・ 前回のコラム「利回り曲線(Yield curve)とは」では,日本とオーストラリアの国債の利回りを題材に,将来の金利予想についてお話しました。また,前々回のコラム「将来の為替をより『正確に』計算する」では,主に為替デリバティブや外貨の仕組債に関連する将来為替の計算過程に触れました。

・ 今回は,平成19年頃に売られていた「期限前償還条項付円/米ドル為替連動債券」を取り上げて,理論上の将来の為替予想とどのような関係にあるか,話を進めます。この外国債券(外貨の仕組債)は,期間20年で,半年に一度,米ドル円の為替が一定の水準よりドル高円安であった場合に早期償還されるという条件が付いていました。そして,早期償還(期限前償還)を判定する為替水準は,半年ごとに50銭づつ円高になるような為替レートに設定されていました。

・ 将来為替の理論価格(金利平価)によれば,低金利通貨の方が,(高金利通貨に比べて)高くなる傾向にあると結論されます。そこで,外貨の仕組債が早期償還となるかどうかの理論的予想は,半年ごとに50銭づつ円高方向に設定された早期償還する水準よりも速く,将来為替の理論価格が円高となるのかどうかがポイントとなる,といえるでしょう。

・ そこで,実際に仕組債の発行当時の金利水準で将来為替の理論価格を計算してみると,図1のようになりました。将来為替の理論価格は,発行直後こそ早期償還となる水準に近いものの,時間が経つにつれ,早期償還となる水準から遠ざかっていく,つまり早期償還となる為替水準が起こりにくくなっていくことが分かります。
(図1)

FW為替イメージ図1

・ これが,将来為替の理論価格(金利平価)による帰結です。現時点で観察可能な金利(利率)から最も合理的とされる計算によって導かれたものではあります。
しかし,ふり返ってみて平成19年から早12年余り,今では,ブロック・チェーンやAIによる自働運転技術など,当時は遠い先の夢物語と思われていたような事柄が現実になりつつあります。当然ながら,平成19年当時のマーケット(市場参加者の総体としての思惑)は,こうした革新的技術の発明・発見(イノベーション)や技術の進展は,織り込むことができません。政権交代による金融政策の変更や,災害,外国の経済発展など,10年先の将来には,「予想出来ない未来」が待ち受けているのかも知れないのです。満期までの期間,あるいは,契約期間が長いほど,将来の予想は賭博的色彩が強くなるのだと思います。

・ 銀行や証券会社は,債券を発行した後,あるいは機関投資家として購入した後は,実際に発生する事柄や指標の動きに応じて,日々,ダイナミック・ヘッジなどと呼ばれるポジション管理を行っています。為替デリバティブや仕組債は「売切り商品」とされ,顧客は購入時に確定した条件に拘束されることが前提とされています。ポジション管理を自ら行うことができる人はごく少数でしょう。ここに大きな危険性が潜んでいるといえます。


11月 26 2019

■ 利回り曲線(Yield curve)とは

・ 満期までの期間ごとに金利(利率)がどのようになっているのか,実際に観察してみます。財務省は,国債の金利情報を公表しています。本年11月25日の金利(利回り)を縦軸にとり,満期までの年限(期間)を横軸にとって,グラフ化すると図1のようになりました。
(図1)
利回り1

・ 上のグラフ(図1)から分かるように,期間10年までの利回りはマイナス圏を推移して,その後の期間の部分(期間10年から40年)で緩やかにカーブを描いて上昇しています。この長期金利が短期金利を上回り,利回り曲線(イールド・カーブ)が右上がりとなっている状態を順イールドといいます。将来的に金利が上昇すると考えられれば,順イールドになります。逆に,将来的に金利が下落すると考えられれば,逆イールド(短期金利が長期金利を上回り、イールド・カーブが右下がりの曲線)になります。

・ ちなみに,マイナス金利となっていない外国ではどうでしょうか? 例えば,本年11月25日のオーストラリアの国債の利回りについて調べ,グラフ化してみると図2のようになりました。期間3年までは利回りは下落(先安感)していますが,その後は上昇に転じていました。
(図2)

利回り2

・ 債券の途中売却価格は,大きくは将来の金利予想を反映しているといえます。国債の利回りを観察することで,機関投資家(プロ投資家)の将来予想をうかがい知ることができそうです。


11月 16 2019

■ 将来の為替をより「正確に」計算する

・ 半年や,1年先くらいなら,現在の金利(利率)を前提に将来為替の理論価格を計算しても,大きな影響はないと直感的には感じられます。しかし,当コラムで解説したように,複利の効果はじわじわと効いてきて,10年後,あるいは20年後の将来の理論価格は,大きくズレてしまっているのではないか,心配です。
そこで,今後5年先,10年先の将来の為替水準を考える上で,現在の金利(利率)をベースとした金利平価より正確に理論価格を導くことは出来ないのでしょうか?

・ 銀行間では,LIBOR(ロンドン銀行間取引金利:変動金利)を固定金利に交換する取引(スワップ取引)が行われています(2021年以降は廃止予定)。そこで提示されている金利(利率)は,金融のプロである金融機関が将来予測して決めている(取引が成立している)金利(利率)ですから,素人の単なる直感に比べれば合理性がありそうです。

・ そこで,証券デリバティブの分野では,現実に行われているスワップ取引の金利(利率)をベースとして,利払の回数を将来の1回(スポットレート(ゼロレート))に変換したり,値の得られない時点についてブート・ストラップ法などで補間することによって,可能な限り実世界に「近似」させて,「割引現在価値」を計算することが行われています。少し前の話になりますが,世間を騒がせていた為替デリバティブや,外貨の仕組債においては,こうした考え方による割引計算が用いられていました。

・ こうした計算によって,直感に比べれば合理的な将来の金利(利率)をもとに,将来の為替の理論価格を導くことができるのです。しかし,繰り返しますが,あくまで理論価格であって,必ずそうなるというものではありませんが・・・。


11月 10 2019

■ 為替相場に関する考え方

・ さて,理論価格つながりで,将来の為替相場の決定理論を一つ紹介します。かつて銀行と中小企業との間の契約で問題となった為替スワップや,ゼロコスト・オプション,為替の動きを参照する仕組債にも関係します。

・ それは,金利平価(きんり へいか)です。為替裁定(かわせ さいてい)といわれることもあります。平たくいえば,同じ期間で比べれば,それぞれの国の「金利で運用した結果,将来の通貨額は,価値が等しくなる筈だ」というものです。これをあてはめれば,超低金利政策がとられているわが国では,どの外国通貨と比べても,将来の為替は円高に偏る,というのが理論上の帰結となります。

・ 年1%の金利であるA国(日本)と,年5%の金利であるB国(米国)とを想定します。現在,1米ドル=100円と仮定すると,今現在の1万円は,年1%の複利運用の結果,10年後には,1万1046円になります。 他方で,年5%の複利運用の結果,現在の1万円に相当する100ドルは10年後には,162.88ドルになります。

金利平価

・ お金の額面(価格)の増え方は,金利によって,このように違いがでます。しかし,そのお金の価値は同じ筈なので,将来のある時期までの金利による運用の結果の額面額は,為替相場として均衡する筈です。 そうすると,各年までの運用の結果の元利合計で,1ドルあたりの円がいくら必要かという為替換算をすれば,フォワード・レートが導けます。

・ これはあくまで理論的帰結ですから,実際の相場は,需給など様々な要因の影響もあり,この帰結どおりにはなりません。しかし,こうした将来の為替の決定理論が,多くのデリバティブの解説書で取り上げられていることからすると,デリバティブ商品を取り扱う銀行や証券会社では,こうした理論価格を,将来の為替予測の参考にしているのだと思われます。


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