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11月 10 2019

■ 為替相場に関する考え方

・ さて,理論価格つながりで,将来の為替相場の決定理論を一つ紹介します。かつて銀行と中小企業との間の契約で問題となった為替スワップや,ゼロコスト・オプション,為替の動きを参照する仕組債にも関係します。

・ それは,金利平価(きんり へいか)です。為替裁定(かわせ さいてい)といわれることもあります。平たくいえば,同じ期間で比べれば,それぞれの国の「金利で運用した結果,将来の通貨額は,価値が等しくなる筈だ」というものです。これをあてはめれば,超低金利政策がとられているわが国では,どの外国通貨と比べても,将来の為替は円高に偏る,というのが理論上の帰結となります。

・ 年1%の金利であるA国(日本)と,年5%の金利であるB国(米国)とを想定します。現在,1米ドル=100円と仮定すると,今現在の1万円は,年1%の複利運用の結果,10年後には,1万1046円になります。 他方で,年5%の複利運用の結果,現在の1万円に相当する100ドルは10年後には,162.88ドルになります。

金利平価

・ お金の額面(価格)の増え方は,金利によって,このように違いがでます。しかし,そのお金の価値は同じ筈なので,将来のある時期までの金利による運用の結果の額面額は,為替相場として均衡する筈です。 そうすると,各年までの運用の結果の元利合計で,1ドルあたりの円がいくら必要かという為替換算をすれば,フォワード・レートが導けます。

・ これはあくまで理論的帰結ですから,実際の相場は,需給など様々な要因の影響もあり,この帰結どおりにはなりません。しかし,こうした将来の為替の決定理論が,多くのデリバティブの解説書で取り上げられていることからすると,デリバティブ商品を取り扱う銀行や証券会社では,こうした理論価格を,将来の為替予測の参考にしているのだと思われます。


11月 04 2019

■ 利率がマイナスになると金利を払わなければいけないの?

・ 金利(利率)がマイナスになると,金利を払わなければならないの?という素朴な疑問について考えます。

・ 債券の利率は変動しない
 先のコラムでは,債券の途中売却を例に債券利回りの考え方を紹介しました。そのとき,債券を買いたいという需要が強ければ,たとえ将来得られるキャッシュ・フローを上回っても取引され,債券利回りがマイナスに落ち込むこともある,ということを書きました。ここでは,債券の取引価格の高低であって,債券の保有者と発行体との,金利を支払う・受け取るという立場が逆転する訳ではありません。

・ マイナス金利政策
 マイナス金利政策は,中央銀行が,政策金利を0未満に誘導するものです。民間銀行は,中央銀行にお金を預けることができますが,その際の,預金金利をマイナスにするのが,マイナス金利政策です。
 現時点では,民間銀行は,ものすごく低い利率ですが,一般預金者に対しマイナス金利を適用していません。しかし,民間銀行は,中央銀行に預金しても,利息を受け取ることはできず,逆に,預けたお金の保管料を支払わなければならない,という状態なのです。ここでは,金利を支払う・受け取るという立場が逆転しています。

・ 価格形成と保管料
 当コラムでは「■ 商品先物の理論価格」や「■ 期先の上昇幅が期近よりも大となる理由」,「■ 「深掘り」をしましょう(輸入トウモロコシの代金の半分は海上運賃です)」で,日本の商品先物取引の価格形成に,「保管料」や,輸入商品の場合の「海上運賃」が関係することを書きました。
 お金についても,「保管料」的な発想が交錯するのは興味深いですね。


10月 26 2019

■ 普通社債の途中売却代金(債券の利回り)

・ 割引債の考え方(割引現在価値)が理解できれば,債券の途中売却の際の基準となる価格も,合理的に考えることができます。もちろん,発行体の信用力の変化や人気など需給要因で実際の取引は成立しますが,ここでは,そうした要因は無視し,いくらであれば市中金利と比較して合理的かを考えてみます。

・ 例えば,市中金利が年1%の状況下で,返済能力に全く問題がない会社が,額面100万円,払込金額=額面100%,年利1%で,期間5年の円建普通社債を発行し,投資家Aさんが,これを買い付けて,債券の残存期間が残りちょうど2年のときに売りたいとした場合に,これを買いたいと思うBさんは,いくらで買えば合理的なのでしょうか?

・ 普通社債は,その発行(起債)と同時に,発行体が,利払と満期における返済額(満期償還金額)を確定的に決定しています(ここでは取り上げませんが,利払金額(利率)や,償還期日,あるいは,満期償還金額が「条件」に従って変動するタイプの「社債」は,「仕組債」と呼ばれ,リスクが従来型の投資商品とは異なりますので注意が必要です。)。

・ Aさんの立場からみると,Aさんは,3年前に額面100万円の100%に相当する100万円を支払い,1年目から3年目までの合計3回,額面の1%に相当する1万円を3回受け取っています。そうすると,Aさんとしては,100万円(払込金額)-3万円(受領した利金合計)の97万円以上で買手が現れなければ損という立場になります。厳密にいえば,その3年間の間に,市中金利は1%ですので,その分のお金の価値の目減分も加味してくれなければ,売却でわずかな損になるとも言えます。でも,Aさんには,残り2年の満期までの時間を前倒ししてでも,お金が要るという売却へニーズがあります。細かなことは言っていられず,額面で損がなければいい,というような立場でしょうか。

・ 他方で,有利な投資なら買ってもいいかなと考えるBさんの立場からみると,既発債を買うと,Bさんは,2年後に普通社債の発行体から確定金額で100万円を払って貰えると確約されています。また,購入する時期は,残りちょうど2年の期間ということですから,購入から1年後(債券発行から4年後)と,購入から2年後(債券発行から5年後)には,額面の1%に相当する利金1万円が2回払って貰えると確約されています。
  市中金利と債券の固定金利が1%で同じですので,残期間2年の債券を額面どおり100万円で購入しても,Bさんとしては「損」はないはずです。ですが,それであれば,市中金利で運用すればよく,Bさんにとって有利な投資とはいえません。

  そのため,例えば,Bさんは,98万円でAさんから買うことができれば,98万円の買付代金に対して,1年目の金利1万円,2年目の金利1万円と,償還金100万円の合計102万円を得られることになり,98万円に対して2年で4万円を獲得できますから,実質的には年2.04%の利子を得たのと同じです。

 4万円=償還金100万円+2年目利金1万円+1年目利金1万円-買付代金98万円

 2.04%=4万円(比べる量)/98万円(もとにする量)

・ このように,売りたい側と買いたい側との思惑が一致して満期まで存続期間のある債券の売買が行われます。債券市場で金利が高騰・下落したという場合,普通社債の固定金利が変動する訳ではなく,上記のように,売りたい側と買いたい側の需給によって,途中売却価格が決められると,そこから逆算して,利回りが算出されて,「金利」という形で報道されているのです。

・ そして,債券の将来分の金利収入と償還金額の合計額よりも高い値段で取引されると,債券の利回りはマイナスとなります。株式に比べ,国債などの債券は安全資産と考えられていますから,景気の先行きに不透明感が増しているような場合には,購入価格よりも高値で売り抜けられることを前提に,マイナスの利回りであっても,債券を買おうとする人はいるようです。


10月 21 2019

■ 金利のない債券?(割引債)

・ ここまでのコラムでは,元金に対して年利〇%の利息が付く,というような普通社債を念頭に解説してきました。では,金利が全く付かない債券があるとしたら,その値段をどうやって決めればよいのでしょうか?

・ 例えば,市中金利が年1%の状況下で,返済能力に全く問題がない会社が,5年後に100万円を返すと約束するとき,いくら貸せば,市中金利と同じ運用ができたことになるのでしょうか?

(100万円を複利年1%で〇年運用)
  1年後:101万0000円(100万円×(1+0.01)^1)
  2年後:102万0100円(100万円×(1+0.01)^2)
  3年後:103万0301円(100万円×(1+0.01)^3)
  4年後:104万0604円(100万円×(1+0.01)^4)
  5年後:105万1010円(100万円×(1+0.01)^5)

   これを逆に,

(〇年後に複利年1%で100万円になる金額)
  1年後:99万0099円(100万円/(1+0.01)^1)
  2年後:98万0296円(100万円/(1+0.01)^2)
  3年後:97万0590円(100万円/(1+0.01)^3)
  4年後:96万0980円(100万円/(1+0.01)^4)
  5年後:95万1466円(100万円/(1+0.01)^5)

  と考えれば,95万1466円は,年1%の複利運用で5年後に100万円になると考えられます。
  このように,答えは95万1466円です。

・ 5年後の払戻金額だけが決まっている債券であっても,市中金利と比較した「運用」を観念することで,現在の価値が算定されます。こうした利金がなく満期時に額面償還され,額面価格より低く発行価格が設定されている債券を割引債(わりびきさい)といいます。


10月 15 2019

■ 債券の金利と信用リスク

・ 中央銀行の政策金利に近い金利として,銀行間取引における金利があります。少し前の金融工学の解説書には,リスク・フリー・レートとしてLIBORという銀行間取引の金利が計算基準として用いられておりました。その発想というのは,倒産するとは考えない銀行同士で行う短期取引の金利だから,信用リスクは無視して構わない,だから,リスク・ゼロの取引であっても観念せざるを得ない金利(利率)なのだ,と。

・ しかし,一国の金融システムの一翼を担っているからといって,潰れないあるいは潰されないと考える(too-big-to-fail)のはおかしいと思います。株式会社となっている銀行は,営利目的企業に過ぎないのであり,取り付け騒ぎが起きないでいるのも相応しい企業努力があるからなのだと思います。

・ お金に対する信任も,他の人も価値があると思うと信じることが,皆に当てはまるからだとも考えられており,多くの人が,単なる紙片や金属片と捉えるようになれば,通貨制度は成り立ちません。

・ 話が脱線してしまいましたが,お金を貸す側は,普通,借り手がきちんと返してくれるのかを考えます。個人なら職業や収入を基準に,企業ならその経済的規模や成長性などを考えて,同じ分類の総体で,返してくれなくなる,つまり倒産・破産する率を考慮して,貸付の際の金利に含めるでしょう。
  このリスク・フリー・レートからの「上乗せ分の金利」が,借り手の信用力に応じた金利分なのです。債券については,逆に,借り手が金利を決めて起債しますから,金利が高い債券の方が,金利の低い債券よりも,発行体の信用力が劣るということを意味します。


10月 08 2019

■ 外国の債券はなぜ高金利なのか?

・ 素朴な疑問として,なぜ,日本では金利が年0.001%しか付かないのに,外国では年5%くらいの金利が付くのでしょうか? 決して,外国の企業が日本の企業より気前がよいからではありません。

・ 企業なり,国なりが,資金を調達する際に発行する借用証書が「債券」なのですから,貸してくれる人が現れる程度に,利息を約束しないとお金の「貸手」が現れません。その金利を決定する上で,基準の一つとなっているのが,その国のインフレ率です。

・ 日本では長らくデフレが続き,政府や日銀が2%の目標を掲げて金融政策を執っていますが,中央銀行の大きな役割がインフレ・ファイターと言われるように,外国とくに経済成長をしている国にとっては,年4%,年5%のインフレが進行するは自然なのです。

・ 年5%のインフレが起きている国の中は,今日100通貨単位で買えたものを1年後に全く同じものを買うのに105通貨単位を払わなければならないという状態です。つまり,毎年,1年前のお金の価値と比べて5%づつお金の価値が目減りします。お金の貸手が現れるように,この物価上昇によるお金の価値目減分を埋め合わせるために,金利を付ける必要がある,ということです。

・ 各国の中央銀行は,金融政策を行う手段として,公定歩合・政策金利の誘導を行っています。その国の政策金利をみることで,その国のインフレ率がおおよそ推し量れるのではないでしょうか。

・ そして,大雑把にいえば,世界中の国ごとに基本となる利率は違うのですが,世界中を駆け巡るお金の動きによる為替相場によって,円貨換算した場合の名目額は調整されるのです。


10月 08 2019

■ シリーズ・外国債券

・ みなさん,ご無沙汰しております。証券被害事件に取り組んでおりますと,わが国の超低金利政策のせいか,外国の株式,外国の債券などが,顧客の取引対象として,登場してきます。

・ 外国政府や外国の準政府機関などが発行する国債・公債,あるいは,外国の企業が発行する外貨建普通社債などについては,為替リスク,信用リスク,カントリーリスク,流動性リスクなどがあり,名前と簡単な説明くらいは説明資料に書かれていると思われます。

・ では,実際にどういうことかという点では,なかなかピンと来ない人も少なくないようです。事件処理を通じて理解したことを,今後,「シリーズ・外国債券」として書きます。


8月 24 2017

■ オプション・プレミアムの跳ね上がり方(ファット・テールのその時に…オプション取引に関する専門的な基礎知識③)

・前回,前々回と当コラムでは,急激な相場下落が数年に一度ほぼ確実に発生するであろうことを解説しました。今回は,そうした急激な株価下落のときに,オプション・プレミアムがどのように変化するかについて焦点を当ててみたいと思います。

・オプションの代金(プレミアム)は,当コラムでも解説しているとおり,理論的には,本質的価値と時間価値とで説明されます。しかし,実際の取引では,理論価格を参照しながらも,一般の商品と同じく,需給・人気によって値が決まります。

・そこで,実勢株価から遠く離れたディープ・アウト・オブ・ザ・マネーのオプションは,普段は1単位あたり数円~数10円の低い値段しかつきません。しかし,大きな相場変動が発生すると,100倍~300倍程度に値段が跳ね上がるのです。

・実際を見てみましょう。

(図1)

2007プット行使価格別

・上の図1は,平成19年9月限の日経225オプション取引の実際のプレミアムの推移を表したものです。アト・ザ・マネー・に近い行使価格1万7000円や1万5000円のオプションでは,プレミアムの跳ね上がり方は,5倍~10倍くらいです(グラフ左軸目盛)。ところが,平成19年7月終わりに1単位1円をつけていた行使価格1万2000円のオプションは,なんと8月17日には1単位100円をつけ,100倍にまで跳ね上がっているのです。

・1円が100円に化けたとはスケール感が涌かないかも知れませんが,1単位1円~数十円のクズオプションを売って,SQにはどうせ権利放棄されるだろうと思っていると,相場の急激な下落により(行使価格を突き抜けて実勢相場が下落すると),クズオプションの本質的価値が急激に大きくなって追証請求を受けることになります。そうなると,追証を翌営業日の正午までに入金しないといけなくなり,追証を入れずに決済しようとしても,受け取ったプレミアムの10倍~100倍を出さないと決済(買戻)できないという事態に陥ります。

・こうしたプレミアムの急変(アト・ザ・マネー近辺よりもアト・ザ・マネーより遠い方が変化の倍率は大きい)は,次の図2や図3のとおり,数年に一度発生しています。

(図2)

2008プット行使価格別

(図3)

2011年プット行使価格別1

・このように,ファット・テールと呼ばれる状況になると,アウト・オブ・ザ・マネーのオプションの価格(プレミアム)は,とても大きく跳ね上がるのです。こうしたオプションの価格変動の特性を,あなたが取引を始める前に教えてもらいましたか?


8月 20 2017

■ 外れることを予測する!?(オプション取引に関する専門的な基礎知識②)

・テール・リスクとは

平成29年8月6日の日経新聞には,7月の調査で米国債券市場に関わる3割の機関投資家が「テール・リスク」を心配していると報じられていました。

この「テール・リスク」とは,市場の大きな変動というリスクで,ファット・テールとも呼ばれます。

金融工学(証券投資理論)の世界では,値動きの激しさを,ボラティリティーとして捉え,価格変化率の大きさは対数正規分布に類似すると仮定されています。そして,大まかにいえば,大数の法則により,値動きの発生確率を(対数)正規分布の形に従う確率分布として捉えることができると仮定されてはいるものの,実際の相場では,平均(標準偏差=ボラティリティ=σ=1)から極端に離れた事象が発生する確率が,正規分布の形(釣り鐘型のカーブ)が示す確率より高くなっていることが知られています。こうした現象のことを,ファット・テールというのです。

東日本大震災クラスの地震は,100年に1度発生します。これと似ているのです。

 

・ファット・テールの実際

では,実際の日経平均株価の動きからファット・テールをみてみましょう。

日経225頻度

上のグラフは,前回のコラムで取り上げた平成19年1月から平成23年4月の日経平均株価終値の1日あたりの騰落(幅)を,発生の頻度ごとに示したヒストグラムです。結果は,だいたい正規分布に似た形となり,理論と現実が大きく異ならないことが,このヒストグラムからもお分かりになるかと思います。

さて,株価の騰落の発生(確率)が正規分布なら,無限大(∞)にも,その逆(-∞)にも,同様になだらかに0に近づいていく筈です。ですが,実際には,上記ヒストグラムをよくみるとお分かりいただけるように,0に近づきながらも,0ではない数値が発生し正規分布のカーブより上に飛び出た部分があります。このように,現実世界の株価の騰落(幅)の発生の仕方は,左右対称ではないのです。上の図に赤丸で示したように,1日で600ポイントを上回る上げ幅はほとんど発生していないのに対し,1日で600ポイントを上回る下げ幅はしばしば発生しているのです。

 

・背景の投資家心理

この相場の上昇(幅)より下落(幅)の方が発生し易いという現象は,取り付け騒ぎなどを想像すれば分かるように,人間の心理・行動を反映した結果です。このように,実際の株価の動きを統計的にみても,急激な相場の下落が,数年に一度の割合で発生することが分かります。

 

・万一への備え

機関投資家(プロ投資家)は,急激な相場の下落が,数年に一度の割合でほぼ確実に発生すること(ファット・テール)を知った上で,オプション取引などのデリバティブを使ったヘッジを行っています。投資に失敗したときに備え,いわばセーフティーネットを準備しているのです。

 

・司法は金融資本市場の実務・理論に耳を傾けるか?…司法の公正性

来る9月に,最高裁(司法研修所)がデリバティブに関する研究成果を書籍にまとめるそうです。その内容はみておりませんが,私のこれまでの裁判での経験では,原告側代理人として,金融工学を含む証券理論に基づく主張をしても,被告証券会社側から「理論に過ぎない」とか「仮定に過ぎない」などといった批判を受けると,それ以上,裁判所が取り合ってくれないことがしばしばありました。裁判官には,このような専門的な基礎知識(証券投資の最前線に用いられている確率や統計的手法)についても,一般の交通事故の事件に古典的な物理法則を適用しているのと同じように,最高裁の研究成果の出版物を踏まえて,耳を傾けてもらいたいと思います。


8月 16 2017

■ オプション取引に関する専門的な基礎知識①(株価の大きな騰落と発生頻度)

・しばらく中断しておりましたが,ここ半年の研究成果を踏まえ,当コラム「オプションシリーズ」を再開いたします。

 

・個別株式オプションは,大阪証券取引所に上場市場があるものの,クイックの画面を見学に行った際や,ネット取引口座のオプション取引のイタ画面を見学した際には,日中,ほとんど動きがありませんでした。取引はあまり活発でないという印象でした。

 

・他方で,現在,取り組んでいるオプション取引の事件は,日経225株式指数オプションです。過去の裁判例にも,ときどき登場するほど,裁判では,マイナーながらも,一定数の事件はあるようです。

 

・日経225オプションの原資産である日経平均株価の動きから見てみましょう。

下に表したグラフは,平成19年1月から平成23年4月の日経平均株価の終値の推移と,終値ベースの1営業日あたりの騰落(幅)です。

 

日経225変動幅

・グラフに緑色で示した日経平均の株価の動きは,平成19年7月頃までは1万8000円前後でしたが,平成19年8月に急落(パリバ・ショック),その後,平成20年春にかけてズルズルと下がり(サブ・プライム・ローン問題),一時盛り返すも,平成20年10月に急落し(リーマン・ブラザーズ倒産)8000円を割り込んだが,平成21年春頃からは,10月のギリシャ・ショック,11月のドバイ・ショックなど紆余曲折はありながらも徐々に回復し,平成23年3月の東日本大震災による急落を迎えたことを示しています。このグラフによって,歴史的事実に対し,市場がどのような反応を示してきたか,が分かります。

 

・大きな株価の推移は,上記グラフのようなものだとして,1営業日に動く相場変動の激しさは,どうでしょうか? 数値的には,「ボラティリティー」と表現される値の動きのことです。

 

・実際には,上のグラフに赤色で示したような動きであり,平成19年8月17日には▲874円,平成20年10月16日には▲1089円,平成23年3月15日には▲1015円と,前日終値に比べて大きく下落したことが分かります。

 

・こうした人の心理を反映した急激な相場の下落は,上昇する期間のエネルギーの蓄積とそのエネルギーの突然の短期間の解放です。地震が発生するメカニズムに似ているのです。エネルギーを蓄積させるきっかけが,限界(値)に達して,崩落する状況と理解できます。この突然の下落は,数年に一度の割合で発生しています。


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