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2017年2月

2月 26 2017

■ オプション取引は素人がやるものじゃない!(オプション取引の判例(裁判:その2の続編))

・オプション取引の判断は難しい

当コラムでも「オプション代金の決まり方」「オプション代金の決まり方(その2)」で指摘したように,オプションのプレミアムの変動特性は,現物の資産の価格変化とは異なり,特殊です。ストラドルの買いのところで説明しましたが,時間的価値の減価などを考慮して手を打つというのが,オプション取引の世界では,ふつうのことなのです。オプション取引は,その特殊な損益を理解できる機関投資家が主な参加者なのです。

 

前回このコラムでご紹介した京都地裁平成11年9月13日判決も,「オプション取引を理解するためには,プレミアムの形成要因を把握する必要がある。プレミアムは,本質的価値(市場価格と権利行使価格との差)と時間価値との合成である。時間価値は,満期までの原証券価格の変動性の大きさ(ボラティリティ),満期までの残存期間,短期金利,配当率等が要素となっている。」と指摘しています。

しかし,こうした専門用語の持つ意味を理解して,頭の中で,損益曲線をイメージして,その変化を次々と描いていくことができるかというと,かなりの知識と経験を積まなくてはならないでしょう。多少の説明を受けたからといって,素人がすべき取引とは言い難いのです。

 

オプション取引は素人がやるものではない!

この点,京都地裁平成11年9月13日判決も,「長い投資経験と深い知識を有する者でない限り,多くの個人投資家には適合しないというべきである。」と述べています。要するに,分からないまま,素人が手を出すものではない,と。少し長くなりますが,判決文から該当する箇所を引用します。

「(1)投資判断の困難性

オプション取引は,その仕組みが難解である。『売る権利』『買う権利』の売買という概念自体の理解が容易でない。使われている用語も聞き慣れない。対象となる商品が『株価指数』という抽象的なものであり,その値動きの分析には高度の専門性と情報力を要する。また,プレミアムの形成要因の理解,その変動の予測も真に困難である。オプション取引市場の投資主体は,証券会社,機関投資家及び海外投資家が大部分を占めており,日経平均株価オプション取引の平成8年における国内の個人投資家が占める割合は,コールの取引において約8.5パーセント,プットの取引において約6.6パーセントにすぎない。オプション取引をする個人投資家は,豊富な情報を基に株価指数やボラティリティを統計的に予測しながら取引を行っている機関投資家らと取引を行わなければならないのである。

(2)満期日の存在

オプション取引には満期日があり,その日までに,反対売買するか,権利行使するか放棄するかを決断しなくてはならない。このことがより適切な投資判断を困難にしている。

(3)ハイリスク

現物投資と比較して,使用する資金に対する損益の比率が大きくなる(レバレッジ効果)。即ち,ハイリターンが期待できる反面,ハイリスクの可能性があるのである。とりわけ,コール,プットの売り手は,損失額が無限定である。

(4)もっとも,オプション取引には,右のレバレッジ効果の外にも,リスクヘッジ効果(保有株式の値下がりのリスクのヘッジとしてプットを買ったり,購入予定株式の値上がりのリスクのヘッジとしてコールを買う等の方法でリスクの分散を図ることができる)や多種多様な投資戦略が可能になる(例えば,相場が動かなかった場合でも利益を得ることができる)等,現物投資にはないメリットがある。しかし,リスクヘッジが必要なのは大量且つ広範な種類の銘柄を保有している機関投資家であって,個人投資家にとってはその必要性は一般的には乏しいと考えられる。

(5)そうすると,個人投資家でオプション取引に適合するのは,投資家の方からハイリスクを承知で積極的にこれを希望する場合を除き,資金力と長い投資経験があり,証券取引,取り分けオプション取引についての深い知識と理解を有し,他の取引ではできない投資戦略をとる必要がある場合に限られるというべきである。」と。


2月 24 2017

■ オプション取引の投資戦略(オプション取引の判例(裁判:その2))

京都地裁平成11年9月13日判決(大阪高裁平成12年8月29日判決)

これもまた少し古い裁判例ですが,オプション取引の判例(裁判)のその2として,大阪高裁平成12年8月29日判決で維持された京都地裁平成11年9月13日判決を紹介したいと思います。

・オプションの様々な取引手法

上の裁判でも,書店に並ぶオプション取引の概説書同様,オプション取引における取引手法(建玉の仕方)について,①ストラドルの売り,②ストラドルの買い,③ストラングルの売り,④ストラングルの買いの4つが紹介されています。

①ストラドルの売り

ストラドルの売りとは,同一限月,同一権利行使価格のコールとプットを同枚数売る戦略のことです。

株価が上昇しても下落しても損を被ることになりますが,変化幅が一定の範囲内であれば利益を狙えるということからストラドル(straddle:二股をかける,どっちつかずの態度をとるという意)と呼ばれます。損益図は次のとおりです。

ストラドル売

上記京都地裁平成11年9月13日判決は,「株価の変動が小幅になると予想したときの戦略であり,株価の変動が小幅であれば利益が出るが,逆に株価が大きく変動すると,大きな損失を被ることになる。」とコメントしています。

②ストラドルの買い

ストラドルの買いは,同一限月,同一権利行使価格のコールとプットを同枚数買う戦略です。

株価が,上昇か下落かのいずれかの方向に大きく動くと予想される場合にとるべき戦略で,どちらかに大きく動けば利益となりますが,満期時の株価が権利行使価格からコールとプットのプレミアム合計を加減した価格を上回るか下回るかしなければ,オプションを買う際のプレミアムの分だけ損となります。

ストラドルの買いは,短期的には,ボラティリティーの上昇でプレミアムが上昇することを狙った戦略です。つまり,買ったオプションを売って処分する際にプレミアムが高く貰えれば,差額が手元に残ることを狙った戦略なのです。しかし,アト・ザ・マネーのオプションには,時間価値が大きく含まれていますから,時間の経過による減価もまた大きく,売ってプレミアムの差分だけ手元に残すということも,簡単なことではないと思います。

損益図は次のとおりです。

ストラドル買

 

上記京都地裁平成11年9月13日判決は「上昇するか下落するかは判断がつかないがいずれにせよ株価の変動が大幅になると予想したときの戦略であり,株価の変動が小幅であれば損失が出るが,逆に株価が大きく変動すると,大きな利益が出ることになる。」とコメントしています。

③ストラングルの売り

ストラングルの売りとは,同一限月で権利行使価格の違うアウト・オブ・ザ・マネーのコールとプットを同枚数売る戦略のことをいいます。

損益図は次のとおりとなります。

ストラングル売

株価が,ストラドルの売りと同じく,権利行使価格のレンジ内に収まった場合に,最大利益となります。

先の京都地裁平成11年9月13日判決では,「株価の変動が小幅になると予想したときの戦略であり,株価が二つの権利行使価格の間に入ると利益(プレミアム分)が出るが,逆にこれを超えて株価が大きく変動すると,大きな損失を被ることになる。」とコメントされています。

④ストラングルの買い

ストラングルの買いは,同一限月で,権利行使価格の異なるアウト・オブ・ザ・マネーのコールとプットを同枚数買う戦略のことをいいます。ストラングル(strangle:首を絞めるという意)とは,次の買いの損益図が,ひもで首を絞め付けているようにみえることから,こう呼ばれているそうです。

損益図は次のとおりとなります。

ストラングル買

京都地裁平成11年9月13日判決は,「上昇するか下落するかは判断がつかないがいずれにせよ株価が大幅に変動すると予想したときの戦略であり,株価が二つの権利行使価格の間に入ると損失(プレミアム分)が出るが,逆にこれを超えて株価が大きく変動すると,大きな利益が出ることになる。」とコメントしています。


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