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10月 13 2016

■ 負け判決と勝ち判決の差(深掘り)

・裁判では,原告側,被告側ともに,過去の裁判例を引き合いに出して,その事案がどう判断されるべきか,という法律上の主張合戦が行われます。当然,原告側は勝訴の裁判例を,被告側は敗訴の裁判例を裁判所に提出することになります。

・ここで,何が勝敗を分かつかというと,①過去の裁判例が示した規範は時代遅れになっている,②過去の裁判例と今回争われている事案とは,主張立証の緻密性と正確性が違う,という2点です。

・①の時代にそぐわないよという主張は,我が国では,最高裁の判断により,判例法の統一がなされる制度になっていますから,下級審裁判所は,最高裁が示した判断枠組みの中でいかに個別の事案に相応しい結論に仕立てるかという考慮が働いていることを乗り越える意識の表れです。最高裁の判例も変わります。

・②の事案が異なると指摘して,過去の裁判例との違いを指摘するのは,どうでしょうか?
一般に,顧客(投資家側)の属性は,適合性原則や説明義務といった違法性の判断の上で,重要な要素と位置づけられています。ですので,この人は,こういう人だから,その人について判断した裁判例とは違うんだ,と指摘する主張は簡単ですし,説得力もそれなりにあります。

・さらに,顧客属性が同じような裁判例が出てきた場合,どうすればよいのでしょうか?
答えは,「深掘り」です。
裁判例において,どのような主張立証がなされ,裁判所がどのように判断を下したかを検証することです。なぜなら,投資取引被害の分野では,金融とITのイノベーションが指摘されているように,情報化や技術革新が日進月歩であり,裁判をおこす原告側代理人の金融分野における知識や理解力に応じ,主張立証の程度にも「バラツキ」が生じているのが現状です。また,判断者たる裁判所も,原告と被告の主張立証を前提としますし,時として,誤解をしたまま判断を下してしまっている,と見受けられることもあるのです。

・裁判所が判決として示す法規範を前提に仕事しているのが我々法律家です。敗訴判決のどこがどう修正されていれば,勝てていたのかという分析と報告を期待して,経験の浅い弁護士に「敗訴判決」の分析・報告をしてもらうと,決まって,この判決の示した法的規範は,こうこうで敗けています,といった具合の浅いものとなりがちです。これでは,報告者も,聞いている人も,何の勉強にもなりません。

・次回のコラムでは,「師匠」からは「法律家ではない」とお墨付きを得ている私が,僭越ながら,具体的に乗り越え方をお示しいたします。


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