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2月 14 2016

■ 大陸移動説(海外経由の隠された向かい玉)

・ヴェーゲナーさんという人は,1912年に,平たく言えば,世界地図をつなぎ合わせると形が一致することや,海を越えて渡ることができない生物の化石の離れた分布などから,昔は大陸がつながっていたという,大陸移動説を公表しましたが,長く受け入れられませんでした。今回のコラム・タイトルは,この「形が似ている」という着眼点と分析にあやかっています。

・売り買いの差額で利益を得ようとすると,安いときに買って高くなったら売る(転売する)という方法が,日常生活で行う買い物の延長で,まず思い浮かびますよね。同じように,商品先物取引の世界でも,個人を勧誘して受託する商品取引員(専業型商品取引員)では普通,買の取組高の方が売の取組高より数倍多くなります。

・リーマン・ショックが発生した9月15日を含む,平成20年6月~10月の期間について,1限月300枚以上の取組高がある業者という条件で抽出すると76社あり,さらに,買取組高が売取組高より多い業者という条件で絞り込むと32社で,この32社は,専業型商品取引員だと推測がつきます。
自社の顧客に向かう反対ポジションである売取組高を持てば,リーマン・ショックで値が下がった際に,損失を確定していく委託者の損を自社の益として取り込むことになります。しかし,あからさまな向かい玉は,行政処分の対象とされ,また,民事裁判でも違法とされる判決が出ていましたので,実質的に自己の売取組高であっても,他業者の取組高とみえるように工夫する必要があります。そこで,別の商品取引員に,取り次ぎをしてもらうことが考えられます。

・1限月300枚以上の取組高のある76社のうち,買の取組高はほとんど無く,明らかに売の取組高が多い業者は7社あり,商社を除くと,投資銀行2社であることまで分かりました。この2社の取組の中に,向かい玉が隠されていると考えられます。そして,向かい玉であるならば,委託玉が損を確定して仕切られると同時に,向かい玉は益を確定させて仕切られる,といえます。

・買の取組高が多い32社の取組高と,売の取組高に偏っている7社(うち5社は商社)の時点ごとの取組高は,次のグラフのとおりです。

大陸移動説グラフ②(買の損の転化)

・平成20年7月から10月末までの約4か月間に,リーマン・ショックの影響で,金の価格は(上下はありますが)大きく下落しました(1000円,約3分の1)。
上のグラフで赤線で示された買の取組高の多い32社の買取組高は,約16万枚(7月1日)から約6万枚(10月31日)まで,4か月間で約10万枚減少しました。これに対し,上のグラフで水色で示された買の取組高の多い32社の売取組高は,4万枚前後で横ばいに推移しています。
この違いは,値下がりの状況ですから,売建玉は評価益を抱えて追加の証拠金は要らず仕切る必要がないのに対し,買建玉は評価損を抱えて,一般の委託者が,追加資金を入金できなくなり取引を仕切っていったからだと考えられます。

・注目すべきは,上のグラフで青線で示された売の取組高に偏っている7社の売取組高が,同じ期間に約10万枚から約2万枚まで8万枚の減少を見せており,しかも,買の取組高の多い32社の買取組高の減少とほぼ歩調を合わせていることです。
値下がりの状況では,売建玉は,評価益をどんどん積み上げてゆくだけですので,利食いしても再度建てるなどして,仕切っても,売ポジション自体を減らしてしまう必要はない筈です。それでも,こうした高い相関が生じているのは,売の取組高に偏っている7社の売取組高が,経済合理性に反する別の動機に強い影響を受けていることを意味しています。
このように,①買が多い業者の買取組高の減少と,③売が多い業者の売取組高の減少とが,よく似た形であって,相関(相似)性が高いことから,売が多い業者の売取組高の中に買が多い業者が隠そうとした向かい玉が含まれていると考えられます。
暴力団対策法の制定と同時に,暴力団員は外見からは普通の人と区別できなくなりました。服装などを目立たなくしたのです。これと同じように,向かい玉は,最高裁判決(H21.7.16)と同時に上手に隠されるようになったのです。向かい玉もなくなった訳ではないと思います。


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