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12月 01 2019

■ 将来の為替の理論価格を計算してみる

・ 前回のコラム「利回り曲線(Yield curve)とは」では,日本とオーストラリアの国債の利回りを題材に,将来の金利予想についてお話しました。また,前々回のコラム「将来の為替をより『正確に』計算する」では,主に為替デリバティブや外貨の仕組債に関連する将来為替の計算過程に触れました。

・ 今回は,平成19年頃に売られていた「期限前償還条項付円/米ドル為替連動債券」を取り上げて,理論上の将来の為替予想とどのような関係にあるか,話を進めます。この外国債券(外貨の仕組債)は,期間20年で,半年に一度,米ドル円の為替が一定の水準よりドル高円安であった場合に早期償還されるという条件が付いていました。そして,早期償還(期限前償還)を判定する為替水準は,半年ごとに50銭づつ円高になるような為替レートに設定されていました。

・ 将来為替の理論価格(金利平価)によれば,低金利通貨の方が,(高金利通貨に比べて)高くなる傾向にあると結論されます。そこで,外貨の仕組債が早期償還となるかどうかの理論的予想は,半年ごとに50銭づつ円高方向に設定された早期償還する水準よりも速く,将来為替の理論価格が円高となるのかどうかがポイントとなる,といえるでしょう。

・ そこで,実際に仕組債の発行当時の金利水準で将来為替の理論価格を計算してみると,図1のようになりました。将来為替の理論価格は,発行直後こそ早期償還となる水準に近いものの,時間が経つにつれ,早期償還となる水準から遠ざかっていく,つまり早期償還となる為替水準が起こりにくくなっていくことが分かります。
(図1)

FW為替イメージ図1

・ これが,将来為替の理論価格(金利平価)による帰結です。現時点で観察可能な金利(利率)から最も合理的とされる計算によって導かれたものではあります。
しかし,ふり返ってみて平成19年から早12年余り,今では,ブロック・チェーンやAIによる自働運転技術など,当時は遠い先の夢物語と思われていたような事柄が現実になりつつあります。当然ながら,平成19年当時のマーケット(市場参加者の総体としての思惑)は,こうした革新的技術の発明・発見(イノベーション)や技術の進展は,織り込むことができません。政権交代による金融政策の変更や,災害,外国の経済発展など,10年先の将来には,「予想出来ない未来」が待ち受けているのかも知れないのです。満期までの期間,あるいは,契約期間が長いほど,将来の予想は賭博的色彩が強くなるのだと思います。

・ 銀行や証券会社は,債券を発行した後,あるいは機関投資家として購入した後は,実際に発生する事柄や指標の動きに応じて,日々,ダイナミック・ヘッジなどと呼ばれるポジション管理を行っています。為替デリバティブや仕組債は「売切り商品」とされ,顧客は購入時に確定した条件に拘束されることが前提とされています。ポジション管理を自ら行うことができる人はごく少数でしょう。ここに大きな危険性が潜んでいるといえます。


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