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3月 03 2017

■ “新説,ロールオーバー”!?(オプション取引の判例(裁判:その2のさらに続き))

さて,一般的な金融用語でいうロールオーバーとは,前回コラムで,2つの意味があると解説しました。それを前提に,京都地裁平成11年9月13日判決を見てみましょう。事案の証券マンFがいう「ロールオーバー」とは,どのような意味だったのでしょうか?

・京都地裁平成11年判決の証券マンFがいう,“ロールオーバー”

京都地裁平成11年9月13日判決は,オプション取引の具体的な内容について次のように述べています。

「平成9年1月16日にプットを行使されて金263万4414円の損失を生じたが,同日には同年2月限月のコール4単位…を売り,プレミアム合計232万2555円を得て,右損失を累計では帳消しにしている。

同様に,同年3月19日にプットを行使されて金166万3439円の損失を生じたが,同日,同年4月限月のプット1単位及びコール1単位を売り,プレミアム合計187万2555円を得て,右損失を累計では帳消しにしている。

次いで,同年5月7日にはコールを買い戻しせざるを得なくなり金333万5034円の損失を生じたが,同日,当日の日経平均株価が2万0048円であったのに同年6月限月の1万7500円のコール3単位を売り,金595万4748円のプレミアムを得て,右損失を累計では帳消しにしている。」,

「この取引経過を見ると,累計で損失を計上しないことだけを至上目的として取引が行われているように窺われる。」と指摘されています。そして,事案の証券マンFが,「この手法を『ロールオーバー』とい」っていたと認定しています。

・評価損を隠蔽して新たな取引をさせる手法

要するに,証券マンFは,“ロールオーバー”と称して,反対売買で発生した確定損失や,SQ日に権利行使を受けて確定した損失を,穴埋めするだけの多くのプレミアムが得られるよう,オプションの売り取引を繰り返させたのです。

そして,証券マンFが顧客に勧誘したオプション売取引の中には,イン・ザ・マネー(注1)のオプションの売が含まれており,顧客の損失を帳消しにするため,プレミアムの大きい危険性の高いオプションの売(注2)が勧められたことがうかがえます。

(注1)オプションの買い手=取得者が利益を得られる状態にあること,逆にみれば,オプションの売り手=義務の引受者としては取得するプレミアム以上に損失を被るおそれが高い状態にある。

(注2)判決文中「5月7日・・・当日の日経平均株価が2万0048円であったのに同年6月限月の1万7500円のコール3単位」との指摘部分。

・業界用語?

本来,ロールオーバーという言葉は,ポジションの限月間の乗り換えという意味や,翌日への繰り越しという意味なのですが,判決の事案のFさんは,穴埋めすべき損失額とオプション売取引で得るプレミアムの釣り合いという意味で「ロールオーバー」という言葉を使っています。事案に特殊な用例といえるでしょう。

一般的な意味と区別するため,“新説,ロールオーバー”とでも名付けておきましょう。

なお,この京都地裁判決は,紹介した判示部分の後に,証券会社の適合性原則違反を認めました。また,大阪高裁平成12年8月29日判決で維持されています。


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