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10月 19 2016

■ オプションの役割はヘッジ手段(経済ショックと相場)

・ブレグジット・ショック
今年6月,イギリスでEU(ヨーロッパ連合)を離脱するかどうかの国民投票が行われ,EU離脱派が勝利したというニュースが流れました。いまやその当時の相場変動のショックは過去のものとなっていますが,どれほどのものだったか追憶してみましょう。

当時の日経平均株価終値をみると,6月23日は1万6238円35銭であったのが,翌24日には1万4952円02銭となり,一日で,▲7.92%の下落を記録したことになります。東証1部の時価総額は,492兆9647億円から457兆7135億円と,1日で7.15%縮んでしまい,▲35兆2512億円が蒸発してしまったことになります。

・ファットテールの問題
これと似たような経済上のショックは,繰り返し起きています。昨年は中国ショックがおきました。さらに遡れば,平成23年に東北地方を襲った地震の際も,大きなインパクトがありました。インパクトの大小と発生頻度は,まさに,地震に似たところがあるのです。発生確率としては小さくて普段は無視できるような事象を統計的なリスク管理モデルでどう扱うか,ということをファットテール(fat tail)の問題といいます。

・原油当業者によるヘッジ行動(オプションの役割はヘッジ手段)
話を変えて,一昨年の秋から暮れにかけて,それ以前は1バレル=100ドル前後であった原油価格は,米国中央銀行FRBのテーパリング(量的緩和の縮小)とともに下落し,50ドルを割れるかというような急激な下落をしました。こうしたときに,原油生産者によって取引量が膨れたのが,プット・オプションの取得(買い)です。

原油生産者としては,利益を確保するために,実勢相場が60ドルのときに,40ドルでもいいから売る権利を買って,さらなる価格下落に備えるのです。そうすれば,実勢相場が1バレル=30ドルにまで下落したときに,1バレル=40ドルという権利行使価格で売る権利(プット・オプション)を行使することで,原油の売値を確保できるのです。

・言葉遣いに関する提言
裁判例をみていると,「ヘッジ目的」とか「ヘッジ取引」という単語が登場することがありますが,語彙のもつイメージに頼り過ぎている感が否めず,議論に混乱が生じている印象を受けます。
裁判当事者の主張の立て方として,「ヘッジ目的」に当たるか否かといった荒っぽい議論の立て方をするよりも,先の例でいうなら,原油生産者は,原油相場の下落による売却代金が減少するリスクを「ヘッジする目的」で,「ヘッジ手段」として,1バレル=40ドルを行使価格とするプット・オプションを取得した,というふうに,言葉を目的と手段とに分けて表現すれば,正確ですし,分かり易くなると思います。最近買った本には,①リスクを転嫁・抑制するための手段として用いる取引のことを「ヘッジ手段」と呼び,②リスクを抑制したい対象となる資産のことを「ヘッジ対象」と呼ぶ,というように,意識して書き分けられていました。ご参考までに。


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