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2017年4月

4月 13 2017

■ 大阪高裁平成17年12月21日判決(オプション取引の判例(裁判:その3))

・大阪高裁平成17年判決も“新説,ロールオーバー”

さらに,現在抱えている事件処理のため & スキルアップのために このコラムを書いている際に,興味深いことに気が付きました。

 

当コラムでご紹介した京都地裁平成11年判決の事案で,証券マンのFさんが言い出した「ロールオーバー」という言葉の意味(“新説,ロールオーバー”)は,後の世になって,法律家によって立派に定義づけられていることです。

 

大阪高裁平成17年12月21日判決は,曰く「オプション取引のロールオーバーと呼ばれる取引の手法は,オプション取引において損失が発生した場合,その損失をカバーするため,損失額以上のプレミアムを得るためにオプションの売りを行って,株価の成り行きを見るという手法である」と。完全に“新説,ロールオーバー”の意味で,言葉を使っています。

 

・言葉の一人歩き

“新説,ロールオーバー”のように,裁判では,まれに,規範や用語が一人歩きしてしまいます。

事案に当てはめた意味合いや趣旨を汲み取れば,損失を穴埋めするのに十分なプレミアムが得られるよう,オプションを売り建てていくという方針そのものが,顧客の無理解や,事案の証券マンの顧客を立場に配慮しない営業態度とも評価でき,こうした意味を含ませて,適切な造語ないし表現がなかったため,特殊な意味合いで用語が定義づけられてしまった,ともみえます。

しかし,反面,一般的な金融用語からは乖離した意味ともなっています。

そのため,どうしても一般の人からは,日本語で書かれているのに意味が分かり難いということになりかねません。また,裁判例を使う法律家にとっても,判決を読む際には,判断の対象となった事実が具体的にどういうものなのか,当事者や裁判所が,どのような意味で言葉を使っているのかという点にも注意しなければならないのです。

自戒を込めてですが,最近便利になった判例検索には,キーワードに頼り過ぎると思わぬ落とし穴に見舞われるのかも知れませんね。

 

・大阪高裁平成17年判決の指導,助言義務

さて,ご紹介した大阪高裁平成17年12月21日判決には,“新説,ロールオーバー”を前提として,「このようなロールオーバーの取引手法の危険性を考慮すると,証券会社及びその従業員としては,ロールオーバーの取引を勧める場合には,その危険性を十分説明し,顧客がそれをよく理解した上でその取引を行うよう指導,助言すべき注意義務があるというべきである。」と述べて,指導,助言義務を肯定しています。

この判決は,言葉の用例は兎も角,顧客に推奨・勧誘された取引について,損失の危険性が拡大し,その損失が現実化する可能性が高まっていくという過程を的確に洞察しているからこそ,証券会社側に,顧客にきちんと理解させて取引できるよう,指導,助言義務を課したのだといえます。


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